建替え工事をする際には、旧宅から仮住まいへ・仮住まいから新居へ、という2回の引越しが発生します。通常の引越しとは違う、注意すべき点をすべてまとめました。
建替え工事とは
古い家屋を完全に取り壊し、新しい家屋を建築するのを「建替え」といいます。「解体工事」と「新築工事」の2種類が連続して発生し、その間生活の拠点がなくなるため、施主は仮住まいを用意する必要があります。
さらに、「旧宅から仮住まいへ」「仮住まいから(完成した)新居へ」という、2回の引越しがあることも特徴で、工事費用のみならず引越し費用や仮住まいの生活費など、何かと出費が高額になることをきちんと押さえて、準備していく必要があります。
引越しの流れ
仮住まい探しはいつから始める?
建替えを考えたら、まずは業者探しから始めます。
新築工事を担当するハウスメーカーを選定して契約を交わしたら、そのハウスメーカーの斡旋する解体専門業者(もしくは分離発注で施主自身が探した解体業者)が解体工事を始めるまでの間に、仮住まい探しを済ませなければなりません。
この「タイムリミットあり」の住まい探しが大変です。解体工事着工に間に合わなければ、住む家がなくなってしまうからです(実際は着工を遅らせることになるでしょうが、それも良くありませんね)。
また、後述しますが、期間限定でなおかつ短期間の賃貸契約となるため、断られることが多いとも予想されます。もともと物件探しは難航することも想定に入れておかなければならないのです。
時間に余裕を持って進めなければならないと心得ておきましょう。

荷造りと不用品処分
荷造りの際には、不用品の処分を並行して行います。これは通常の引越しでも同様のことですが、建替え時の引越しの際には「モノを減らす」ことがさらに重要になります。
なぜかというと、おそらく旧宅よりも仮住まいは狭いため、旧宅にあるモノをすべて仮住まいに運び込むことは難しいからです。断捨離にもいい機会だと考えて、不用品はしっかり選別して処分してしまってください。
引越し
解体業者と契約を交わし、工事の日程も決めて、荷造りがしっかりできたらいよいよ引越しです。
引越し業者によっては、「建替えプラン」のようなものを用意しているところもあります(名称は各社違います)。2回分の引越しをセットにしてくれたり、仮住まいに入りきらない荷物を一時預かりしてくれたり、といったサービスです。
2回の引越し両方を同じ業者にまかせられるのであれば安心ですし、荷物を預かってくれるのも非常にありがたいですよね。
引越し業者を選ぶ際には、こういったプランを用意しているところを狙うのもありでしょう。
2回目の引越し
新居の完成を待って、2回目の引越しとなります。
もしかしたら、仮住まいで「ついに開けなかったダンボール」がありませんでしたか?
それは、もう不要なものなのかもしれません。2回目の引越しを前にして、思い切って処分するのもいいでしょう。
仮住まい探しの注意点
割り切りと妥協も必要
仮住まいでの数か月は、さまざまな面で普段通りの水準を維持することは不可能だと思っておいた方がいいでしょう。
狭い、古い、職場から遠い、間取りが気に入らない…住まいに求めるものにはいろいろな基準がありますが、仮住まいは数か月というリミットがあるものです。すべて希望通りに叶えるのは無理がありますし、また叶えようとするのも危険です。
というのも、前述したように仮住まい探しは解体工事着工までに終わらせなければならず、とにかく時間がないのです。短期間の賃貸契約が敬遠される傾向にあるため、物件探しが難航するということも前述しました。いろいろな意味で、物件にあれこれと条件をつけている場合ではないのです。
割り切りと、時には妥協も大事です。ここまでは譲れない、という点がいくつかあるなら、それ以外には目をつぶるようにしないと、いつまで経っても仮住まいが決まらないということにもなります。
また、こだわりを取り払って妥協点を考えるようにすると、費用面での節約にもつながります。スペックを抑えて物件探しをすることによって、家賃の節約にもなるでしょう。
賃貸住宅よりマンスリーマンション
仮住まいとしての物件を借りる際に、初期費用には通常下記のようなものがかかります。
内訳には、
・前家賃(家賃の1ヶ月分)
・敷金(家賃の各1~2ヶ月分)
・礼金(家賃の各1~2ヶ月分)
・紹介手数料(家賃の1ヶ月分)
ここに保険料なども入ってくることを考えると、相当高額になることが予想されますよね。「家賃の4~6か月分」ぐらいが想定されるため、たとえば家賃が8万円だとしたら、初期費用で32~48万円以上かかるということです。
そこでおすすめなのが、マンスリーマンションです。短期入居者や期間限定入居者向けのため、敷金・礼金がかからないことがほとんどで、紹介手数料も無料の場合が多くなっています。そのため、初期費用を大きく節約することができるのです。
ただし、マンスリーマンションは家具・家電付きのところが多く、家賃が割高に設定されていることがほとんどです。
すると、仮住まい生活の期間が長くなるほど、トータルでは通常の賃貸物件よりも高くついてしまうことがあります。
工事期間がどのくらいになるのか、ということもよく踏まえて物件探しを行う必要があるのです。
荷物の扱いの注意点
「モノを減らす」ことの重要性については、前述した通りです。引越し代の節約にもなりますし、何より仮住まいに荷物が全部入りきらない、という事態を防ぐためです。
引越し業者の一時預かりサービスについても触れましたが、そのほかにも「トランクルーム」のようなところを利用して、新居が完成するまでの間荷物を預けておくという方法もあります。

仮住まいでの手続き注意点
住民票の異動は「仮住まい期間が1年以内なら必要なし」
引越しをすると必要な「住民票の異動」。短期間限定の引越しである場合も移さないといけないのかというと、必ずしもそうではありません。
というのも、「1年以上生活拠点が移る場合」が住民票を移すべき目安だと法律で定められているからです。
仮住まい期間が1年以内で確実に終わりそうなら、移さなくてもいいということです。
正直、住民票を異動するとかなり面倒なことも多いため、移さないですむならそれに越したことはない、と思っていた方がいいでしょう。
ただし、住民票を移す・移さないに関わらず、引越しに伴った手続きとして、しておかなければならないことはいくつかあります。
住民票を移さなくてもするべき手続き
・郵便物の転送届け
・ライフラインの手続き(電気・ガス・水道などの停止と再契約)
・衛星放送・宅配サービス・NHK受信料・新聞配達の休止・転居手続き
・職場への連絡(交通費の支給関連・税金の納入先関連)
・各種住所変更(ネット通販など)
上記に関しては、住民票の異動をする・しないに関係なく必要な手続きです。どれも忘れると「二重でお金を払ってしまった」「あとから面倒なことになった」ということが起こりかねないものばかりなので、注意しましょう。
住民票を異動させたときの手続き
住民票を移した場合は、上記のほかにもするべきことが出てきます。人によっては該当する・しないに差はありますが、主に公的なものの住所変更です。
・マイナンバーカードの住所変更
・印鑑登録の住所変更
・運転免許証の住所変更
・児童手当の住所変更
・国民健康保険の住所変更
・国民年金の住所変更
前述もしましたが、かなり面倒なことが多いので、住民票の異動はなるべくしなくて済むようにしたいところです。
まとめ
引越しは、正直ってただでさえ大変なものですが、建替え工事に伴う引越しにはさらに特殊な要素がたくさんつきまといます。
ポイントを押さえて、うまく乗り切ってくださいね。引越しが終わったら、素敵な新居生活が待っていますよ。