通常の引越しと違って、建替え工事に伴う引越しは「2回発生する」「最終的には同じ住所に戻ってくる」という特徴があります。このとき、住民票を移すことは必要なのでしょうか?また、それ以外にもしなければいけない届出や手続きはあるのでしょうか?
今回は建替え工事に伴う引越しにおける、各種手続きについて詳しく見ていきましょう。
建替えに伴う引越しはなぜ特殊?
現在の老朽化した家屋を完全に取り壊し、新たに建築する「建替え工事」。解体工事・新築工事が連続するため工期が長くなるうえ、その間の住まいがなくなってしまうので、仮住まいが必須となります。
しかも、仮住まいでの生活は期間限定です。どんなに長くても1年前後経過後には、新居となった元の住所に帰ってきます。
通常の引越しであれば、転出届を出して住民票を新居のある自治体へ移し、各種住所変更をすればそれで終了ですが、建替え引越しの場合はもう一度同じことを繰り返さないといけなくなるのです。
果たして短期間の転居であることがわかっているのに、住民票は移す必要があるのでしょうか?しかも住民票は一度移してしまうと、それに伴ってやらなければいけない住所変更が多数出てきます。
このあたり、法律などで明確な基準はあるのでしょうか。
建替え引越しの際の、住民票についての考え方
住民票の異動に関しては、住民基本台帳法という法律に基づいて定められています。
通常の引越しの場合、住民票の異動(転住届の提出)は引越し後14日以内に行わなければなりません。
しかし、建替え工事に伴う仮住まいへの引越しの場合は、短期間の異動であることが初めからわかっているため、「必ずしも住民票の異動は必要ない」という見解になっています。
目安としては「1年以上生活拠点が移る場合」は、住民票の異動をするべきとなっています。つまり仮住まいでの生活期間が1年以内であれば、住民票は異動しなくても法律違反とはならないのです。
逆にいえば、仮住まい生活が1年以上になるのであれば、たとえそれが「同じ市区町村内であっても」住民票の異動はしておかなければならないでしょう。
一般的な建替え工事の場合、工事の期間すなわち仮住まいでの生活期間は、6か月から1年ほどです。判断が微妙な場合、長引きそうな要素がある場合は、住民票異動は行っておいたほうがいいといえます。
住民票を異動させなくても必要な各種手続き
「短期間だから住民票は異動させないでおこう」と決めた場合でも、それとは別で必要となる各種手続きがいくつかあります。
転送届け
郵便物を新居に配達してもらえるようにする「転送届け」は、住民票を異動させなくても必要です。解体工事中の旧宅に郵便物が配達されてしまっても困りますよね。
転送届けの有効期間は1年です。もし仮住まい生活が1年以上にわたってしまう場合は、延長で届けを出せばよいでしょう。また逆に1年以内で仮住まい生活が終わった場合は、もう一度仮住まいから新居への転送届けを出せば問題ありません。
ライフラインの手続き
ガス・電気・水道・固定電話・インターネット回線といったライフラインについては、旧宅の解体工事が始まる前に停止の手続きをし、仮住まいでまた契約することになります。
(ただし水道だけは、解体工事の際に粉じん飛散の防止策として水まきを行うことがあり、止めないでほしいと業者から言われることが大半なので、まずは確認しておきましょう)
最近はこのような手続きをホームページで行うことが可能となっている企業も多くあります。手続きがたくさんあって多忙ななか、そのようなサービスは積極的に利用していきたいですね。
旧宅でのライフラインは、解約の連絡を怠ると使ってもいないのに基本料金はかかり続けることになります。
また、ガスについては開栓・閉栓はガス会社の担当者にお願いしなければならないため、早めの連絡を心がけましょう。
衛星放送・宅配サービス・NHK受信料・新聞配達の手続き
これらは休止もしくは住所変更の手続きをしなければなりません。その際に、短期の休止・住所変更であることを伝えておくと、新居に移ったときの手続きがスムーズになる可能性がありますね。
職場への連絡
通勤手当が支給されるような職場だと、住む場所が変わることで交通費の金額も変更になるでしょう。すぐに連絡し、事情を話しておくようにします。
また、年をまたいでの引越しをすると住民税の納付先が変わるなどして、手続きが複雑になることがあります。職場の担当者の手間も増えることが予想されますので、なるべく早めに連絡をして手続きの指示を仰ぐことをおすすめします。
各種住所変更
通販サイトの住所登録など、住まいが変わることでダイレクトに影響が出るものに関しては、一時的にであっても住所変更はしておかなければならないでしょう。解体工事中の旧宅に届けられてトラブルのもとになる、という事態は避けたいところです。
住民票を異動させなかった場合のデメリット
同じ市区町村内での異動であれば、住民票を移さなかった場合もデメリットはほとんどないかもしれませんが、異なる市区町村だと困ること・不便なことがいくつか出てきます。
たとえば、その地区のサービスが受けられなくなる可能性があること。福祉施設や図書館は、基本的にその地区に住んでいる人しか利用できないことが多いのです。
ほかにも、税金の納め先や選挙投票の場所は、住民票がある場所に限られます。こういった関係で、ややこしい事態になってしまう恐れは考えられるでしょう。
また、お子さんがいる家庭では小学生や中学生くらいまで受けられる医療費助成(「乳幼児医療費助成」や「子ども医療費助成」など、呼び名はいろいろ)の内容も、自治体によってさまざまであるため、住民票を移さないと仮住まいで助成を受けることができなくなります。
住民票を異動させたときの各種手続き
住民票を移した場合、前述した「移していない場合の手続き」に加えて、しければならない住所変更がたくさん出てきます。人によって該当するものに差が出るので、ひとつひとつ確認してみてください。
・マイナンバーカードの住所変更
・印鑑登録の住所変更
・運転免許証の住所変更
・児童手当の住所変更
・国民健康保険の住所変更
・国民年金の住所変更
ほかにもクレジットカードや銀行などでも住所変更が必要な場合はありますが、前の住所に戻ってくることがわかっているので、特に変更しなくてもいいといわれることもよくあるようです。各機関に問い合わせてみて、指示に従うといいでしょう。
また、お子さんがいる家庭では幼稚園や学校の転園・転校について悩むこともあるでしょうが、こちらも基本的に不要です。ただ、送り迎えができないほどの遠くに仮住まいをかまえてしまう場合には、転園・転校も視野に入れなければならないでしょう。
このように、住民票を移すことで正直「面倒」はかなり増えてしまいます。もちろん移すことでのメリットもあるのですが、極力異動は控えた方がよさそうですね。
なるべく移さないように進めていきたいものです。
まとめ
・住民票の異動は、建替え工事における仮住まいの生活が1年以内であれば必要ない
・住民票の異動がなくても、ライフラインなどについての各種手続き・住所変更は必要なので、忘れずに行う
・住民票を異動させた場合、それに伴う住所変更がさらに増える。異動させない場合のデメリットをよく考慮したうえで、異動させるかさせないかを検討しよう
建替え工事における引越しは、通常に比べて特殊な面が多く、煩雑でややこしいことが起こりえます。ひとつひとつ丁寧に進めていきましょう。